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「ディアドクター」を観る

自分の書く創作に仮名で登場させるほど西川美和監督贔屓の私。
当然『ディアドクター』
チェック済。
早速観てまいりました。
毎回ほぼ満席
客層は老若男女混ぜ混ぜ。
若干年齢層高めなのは鶴瓶効果でしょうか。
では感想です。

ネタバレ含みますので以下はご自分のご判断で。

西川作品独特の人の心の闇はもちろんしっかり描かれているのですが
この映画は
他人と他人の間にある闇っていうか。
冷酷さというか。
その闇が深い分
人の心にある闇が明るく見えさえする、そんな不思議な感覚がありました。

前作に感じた内面ドロドロ感はあまり感じることなく。
喩えるならば
普段子供たちが遊ぶ穏やかな川の流れだって嵐が来たら突然牙をむく…自然の脅威みたいな。
そういう怖さかな。
温かいと思っているものも実際は得体が知れないかも…という怖さ。
身近にある親しい恐怖…そんな感じでしょうか。

相変わらず西川監督が描く世界はどこか怖くて…好きです。(笑)

つきたいと思ってつく嘘ってそうそうなくて。

大抵は成り行きでつかざるを得ない状況に追い込まれて仕方なくつく。
嘘が嘘をよび、いつの間にか大きな嘘になって。

そしてずっと逃げられず仕方なく嘘をつき続ける。

伊野という男に
悪意は感じない。
むしろ被害者にさえみえてしまう。

彼はいつも怯えていて
人に心を許すことを許されず。

嘘をつき続けることは苦行に近い。


ちょっと
ひたすら演じ続けることを暗黙のうちに求められる役者っぽい。

村人はいつしか観客兼共演者となり。
この芝居にかかすことの出来ない役割を担う。

村人に悪意があるわけもなく。
嘘もない。
自らが芝居に参加している自覚さえない。

彼らが尊敬し、愛していたのは無医村の医療に情熱を傾ける医師伊野治であって
高名な医師である父を尊敬しつつも医師になれず、製薬会社の営業をしながら生命を繋ぐことにささやかな使命感感じ、ちょっとした出来心で偽医者を演じることになってしまった役者の彼ではない。
伊野が自ら幕を引くことで共演者の村人も舞台を降りた。

ただそれだけなのかもしれない。

舞台で陶酔する彼と陶酔する自分を冷ややかに見つめる彼
眼鏡の下から覗くその眼差しは彼の心の揺れを怖いほど鋭く映し出している…。
さて。
これは特別なことなのだろうか。
「他に選択肢がない、彼しかいない」
そういう特殊な環境を舞台に巧みにデフォルメして描かれているが。

実は毎日自分が身を置いている環境も近いものがあるように思う。
自分が主役の時もあり、誰かの共演者の時もあるかも知れない。
何について「偽物」なのかはわからないが「本物」である自分もよくわからず、共演者によって作り上げられたイメージに沿った主人公を必死に演じているのかもしれない。
いつか嘘(何が嘘なのかもよくわからない)
がバレるのではないかといつも怯え、人に心を許せない…。日々苦行。

共演者の自分は…自覚がない。(笑)
誰かの人生に加担しているのだろうか。
物事の本質(本物か偽物か)に意味があるのかないのか…そう考えるとそれさえもわからなくなってくるのだが。

医師伊野治の中に役者の彼を観た一部の人が観たのは本物の彼。
医師としては偽物でも本物の彼ではなかったのか。

役者の彼に薄々気づいていた人々が口を閉ざしていたのは本物の彼に好意を寄せていたから…ではないのか。
それともただ自分たちに演じ続ける彼が必要だったからという打算的な理由だろうか。

彼の正体を知った村人の冷酷さはぞくぞくとする寒気をよび
舞台から降りてしまったら

芝居の幕が下りたら
こんなものなのかな…と。

彼は何をあの村に残したのだろうか。

役を変えまた舞台に現れた彼。

共演者 鳥飼さん。
いや今度は主役が鳥飼さんで彼が脇役なのかもしれない。

嘘は本当になり
偽物は本物になりうる。
逆もまた真。

私はどんな芝居に出ているのだろう。


…ちょっと独白っぽく書いてみました。(笑)

どんな芝居に出るのかはきっと自分で選べるに違いない。
今はそう思ってます。
幕をひくのも演じ続けるのも私の主演の舞台ならきっと私が決めるのだろうと思います。

そういえば監督…これは私の話だって言ってたから…意図はこんな感じなのかな?
ま、何を感じ取るかは人それぞれです。
私にとってこの映画はあの風に揺れる緑の畑のようでした。いろんな意味で自然ってスゴいなぁみたいな。(どんな・笑)
嫉妬や妬み…そういう感情ではなく。
思慕…憧れ…思いやり。
そんなどこかプラスの感情を多く感じた映画でした。

ま、それだけではないのが西川監督の魅力ではありますが。
監督や世間の代弁者のような松重さん演じる刑事。
空気弁のような瑛太演じる研修医。
緩衝材の香川照兄さん演じる営業マン。どれも巧いなぁ~と唸る。
あ…八千草薫も怖すぎ。

巡り会うべくして巡りあった映画かもしれません。
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08:12 | 映画 | comments (2) | trackbacks (0) | edit | page top↑
アラン・ドロンです。「地下室のメロディー」を観る | top | 『I come with the rain』

Comments

# 怖いもの見たさ?
haru さん、さっそくご覧になったのですね~。

作品を見てないのにコメントするのもなんですが^^;;
西川監督の原作・原案本 「きのうの神さま」 は読みましたよ。
厳密には原作ではなくて、監督が映画のために取材したあれこれで、この映画に描ききれなかったものを短編集としてまとめたものらしいのですが、読みながら映画の短編を見ているようで、ワタシは彼女の書いたものが好きですね。実は「ゆれる」も小説しか読んでなくて、DVD持ってるけど見てないんです(笑)。

>相変わらず西川監督が描く世界はどこか怖くて
そうそう。人間の本性っていうか、傷みたいなところをばっさり切り出してくる感じがしますね。

短編「ディア・ドクター」と映画がどう結びついていて、どう違うのか知りたいけど、困ったことに、主演のメガネかけた方、大の苦手なので、この映画は見ないだろうなぁと思っていたのですが、まっちげさん(松重さん)出てるのですか。まっちげさん、昨年、チャン・ジン監督のドラマリーディングに出演されて以来、気になる存在だわ~。


by: lotusruby | 2009/07/07 20:47 | URL [編集] | page top↑
# Re: 怖いもの見たさ?
lotusrubyさん、お返事遅くってごめんなさい。
いろいろ立て込んでて(笑)
「きのうの神さま」未読なのですが。(^_^;)
直木賞にノミネートされたらしく評判上々ですね。
映像化出来ないものを活字で描いている・・という書評に惹かれて今手ぐすね中です。

> そうそう。人間の本性っていうか、傷みたいなところをばっさり切り出してくる感じがしますね。
うん。目線が残酷です。(笑)

私も得意ではないんですがあのいやらしい人間性がとてもよかったです。
松重さんは監督の代弁者のような・・社会の窓っていうか・・そんな役割だったように思います。
彼も面白い役者さんですよね。
何故か「亀は意外と早く泳ぐ」のラーメン屋の無口な店主のイメージが頭から離れないのですが。
(笑)
是非映画の感想を聞かせて下さいね。
by: haru | 2009/07/12 23:04 | URL [編集] | page top↑

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